最終的には、顔
肌寒いくらいの朝。
一日中、雲におおい隠された空に、飛ぶ鳥も、見ず。
こんな空を期待していたのだけれど。
* * *
今夜、参議院議員選挙の期日前投票にいってきました。
投票のさいには、公約や主張、プロフィールをきちんと吟味しなければ。それはわかっているんです、わかっているんですが……。
各候補者に、どうも、それほど差違があるようには見えないんですよね。
選挙期間中ってのは、とくに、そんな気がします。よって立つ位置で、方策や表現はちがいます。けれど結局、みんな「国を政治を生活をよくします」と声高に叫んでいるわけで。
ましてや今回は「年金をめぐる選挙」といわれている。国が責任をもって支払います、100年は安心の制度です。そういってきたけれど、本来あたりまえであるべきことがあたりまえでなかった。それをあたりまえに実行するようにします、というのがみなの主張だから、ますますその差がわかりにくい。
ぼくの頭では、残念ながら、理解不能。かれらがなにを話しているのかすら、わからないときもある。えええっと、それって、たぶん、きっと、日本語なんですよね?
だれが当選してもいいです、政治家になった暁には、うまいことやってください。とりあえず、そんな気分。
* * *
ぼくは、投票は、選挙ポスターの貼られているあの立て看板を眺めて決めることにしています。
「この顔はマズイだろ」
「ま、これなら及第点か」
そんな感じに、立候補者の「顔」で判断する。
「いいかげんだ」と怒られたことがあります。そうかなあ、そうかもしれない。でもやっぱり本心は、不真面目だとも不謹慎だとも失礼だとも思っていなくて。
人の品性って、その人の顔に出てしまうんですよね。どんなに隠そうとしても、ごまかそうとしても、おそろしいことに、表れてしまう。
なので、自分の顔を鏡に映すとき、ぼくは心底うんざりするのだけれど、「表情」ということばの重みが、そういうとき、あらためて得心できる気がします。
なんでそんなにみなさん政治家になんぞなりたがるのか。そのへんの感覚というの、ちっともわからない。でも、ならば。せめてそのなかで品性がいちばんマシそうな人に投票したいと思っているわけです。
ポスターの顔で、それが判断できるのか。
写真の修正なんていくらでもできてしまう。そんな事実は、コンピュータの普及によっていまや常識となりました。ところが、修正すればするほど、元の写真から離れていけばいくほど、そのことによってかえってその「人となり」が浮かび上がってしまったりする。
美容整形した人は、1ヶ所変えると、そのうちまたべつの箇所も手術したくなるらしい。「部分」に手を加えることによって全体のバランスが崩れているのに気づいてしまうから、なのだそう。
究極には、全改造? でも、それでも、期待していたとおりになるとは、かぎらない。
たかが写真、されど……。好感度を上げようと、やたらめったらいじってしまうわけにはいかない。
また、あれこれ規制があるためか、なにかのげんをかついでいるためか、選挙用のポスターというのは、いつみてもどれをみても古色蒼然としていますね。デザインとかセンスといったものが、まったく感じられない。ああ、でも「だからこそ街の風景のなかで目立つのだ」という理由があるのかな、もしかして。それならそれは、立派な戦略です。
ともあれ、選挙用ポスターというのは、あんがい素直。各候補者の顔、きちんと比較できるのではないかと思っています。
* * *
今回もしっかり、立て看板の前で吟味しましたよ。
東京選挙区は定員5人に対し、候補者が20人もいる大激戦区だと聞いていました。でも、掲示板は、思いのほか、すかすか。ポスターを貼っていない候補者がずいぶんいる。
ポスターに頼らないという考え方で活動しているのかもしれません。支援者が少なくて、都内すべての掲示板にポスターを貼ることができないのかも。
こういう候補者は、もうしわけないけれど、考慮に入れません。
ポスターを使わないなら使わないで、それでけっこう。自己アピールの貴重な機会をみずから捨てることを選択したなら、その結果も、引き受ける覚悟があるはずです。ポスターを貼ってまわる支援者を集められない人というのは……。そもそも人望がないというか、そのていどの動員能力すらないという時点で、そのう、政治家としての基本的資質に欠けてません?
* * *
投票、それから食事をして帰宅したら、あれま、選挙公報が届いていました。残念。もう1日早ければ、きちんと目を通してから投票したのに。
でもね、それでも最終的には、やはりポスターの「顔」で決めます。
いそがしい、めんどくさい、興味ない、なんていわないで。並んでいるポスターを、つらつら眺めてみるといい。
そこに立ち上がってくる、政治家をめざす人たちが、あらわにしてしまっている、なにか。
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